韓国ドラマの沼

鑑賞メモその他。新旧ごちゃ混ぜで視聴します。

『根の深い木』世宗という人間

   

뿌리깊은 나무』 

(邦題:根の深い木/英題:Tree with Deep Roots)  

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1418年、譲位により朝鮮王朝4代王として世宗イ・ドが即位したが、軍権を中心に実権は前王である太宗(テジョン)イ・バンウォンが握っていた。王権強化のため有力な臣下をことごとく粛清してきたイ・バンウォンは、イ・ドの義父であるシム・オンとその一家を反逆罪で処刑する。シム家の使用人の息子のトルボクは、幼なじみのタムと逃げ出すが、途中で離ればなれになってしまう。月日は流れ、1446年。イ・ドが父を殺した張本人と思い込んでいたトルボクは、カン・チェユンと名を変えて、イ・ドへの復讐を胸に武官として宮中に勤務する。その頃、宮中では、イ・ドの文字創製事業に関わる人物が次々に殺害される事件が起こっていた。イ・ドから直々に事件捜査を任されたカン・チェユンは、その過程で王権を牽制する秘密組織"密本"との闘争に巻き込まれる一方、文字創製事業の中核を担う女官で、幼い頃の記憶により口がきけないというソイが、タムであることに気付く。(日本公式サイト

 

キャスト・スタッフ
 ●世宗イ・ド:朝鮮王朝4代王。
   /ハン・ソッキュ(『浪漫ドクターキムサブ』『秘密の扉』)

   /ソン・ジュンギ(『トキメキ☆成均館スキャンダル 』『太陽の末裔』)

 ●カン・チェウン/トルボク:兼司僕の兵士。世宗のせいで父親が死んだと思い、復讐を誓う。
   /チャン・ヒョク(『運命のように君を愛してる』『ボイス』)
 ●ソイ/タム:世宗の五男付きの女官。失声症で話すことができない。
  /シン・セギョン(『ハベクの新婦』『匂いを見る少女』)
 ●ムヒュル:世宗の護衛武官。朝鮮最高の剣客。
  /チョ・ジヌン(『シグナル』『アントラージュ』)
 
 他 ユン・ジェムン、イ・ジェヨン、アン・ソックァン、イ・スヒョク、キム・ギバンなど
 
 
 ●演出:チャン・テユ(『風の絵師』『星から来たあなた』)
      シン・ギョンス(『六龍が飛ぶ』『スリーデイズ』)
 ●脚本:キム・ヨンヒョン(『善徳女王』『宮廷女官チャングムの誓い』『六龍が飛ぶ』)
      パク・サンヨン(『善徳女王』『六龍が飛ぶ』) 
 
感想

久しぶりに骨太な史劇ドラマを観ました。

史劇ロマンスなどはちょくちょく観ていましたが、いかんせん政治的抗争にあまり興味がない、似たような服装の登場人物が多数でアジョシの顔の見分けがつけられない(笑)自分は、完走まで時間を要しなかなか苦戦しました。

そもそも史劇では常識的な価値観である「大義のために人命をかける」という価値観にまったくロマンを感じることができない人間ではあるので、前提として史劇苦手問題がありますw

それ故共感度、理解度はあまり高くない感想になりました。(今回は自分の中の解像度が低いので、最後の5段階評価もおやすみします。)

 

ジャンルは、世宗の行った訓民正音(ハングル)という史実に、架空のキャラクターを登場させてミステリー要素を加えた史劇ファンタジーという感じでしょうか。

史劇あるあるだと思いますが、ドラマの主人公が位の高い人物だと物理的な主人公の可動範囲が狭いので、ストーリー運びが説明的になってしまいます。(そこにタイムトラベルなどのSF要素が加わるとまた別)

本作も、特にストーリーの主軸がハングル公布にまつわる攻防戦であった後半では、キーを握るそれぞれの対立勢力の頭が世宗と密本(非公式反王朝政治団体)の本元であったので、一言一句の台詞でのみストーリーが進んでいき、若干くどさを感じました。立場上、宮廷から、アジトから動けない。(それでも世宗は度々宮廷から外出してて、そんなバカな!と思ったwそこはドラマのご愛嬌w)

ちょっとよそ見をしてセリフの一つでも逃せば、自分がストーリーラインから脱線してしまう。かなり集中力が必要ですが、一寸先がわからない切迫感を楽しむことができるストーリーでもある。かなりハラハラしました。

 

SBS演技大賞ハン・ソッキュ 

後半の攻防戦は、いわゆる頭脳合戦とも言えるので、それぞれの頭がもう少しカリスマ性を発揮するキャラであれば、より感覚的に観れて盛り上がったのかもしれないと思います。

でもこのドラマで魅せたかったのはカリスマ性よりそれぞれの登場人物の人間くささなのでしょうね。

特にハン・ソッキュの世宗イ・ドが世子時代(ソン・ジュンギ)から一人の血の通った人間として悩み葛藤する姿には胸打たれました。当時の世宗も裏では時には後ろ向きになり、嘆き苦しんでいたのかもしれないと想い馳せました。

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血眼ハン・ソッキュ

世宗は血筋から生まれた時に王としての役割を担うことは決定している立場ではあります。しかし、父親である太宗の姿に反発心を抱き、王は生まれながらにして王なのではなく、他の人間と変わらない人間である。そのジレンマに早くから気づき、学問研究所を作り訓民正音に費やし王として成長していく。奴婢出身であるソイ(シン・セギョン)やチェウン(チャン・ヒョク)と関わることで一人の人間として成長していく。

心の葛藤を伴う成長物語にリアルさを感じるんです。だからハン・ソッキュの世宗には、本当の世宗もこんな人物像だったのかもしれないと思わせてくれる凄さがあります。

ただ世宗を演じたというより、世宗という一人の人間を演じた、そう感じました。

ちなみに余談ですが、ハンソッキュは『世宗大王星を追う者たち』(19年) で二度目の世宗を演じています。人生で同じ歴史人物を二度演じる人ってなかなかいないですよね。

 

他のキャストも脇役に至るまでキャラが確立されていてよかったです。

もう一人の主役であるチャン・ヒョクの移ろう心情の変化もよかったですし、シン・セギョンの真の一本通った役柄がよかった。

ただチャン・ヒョクは後半、ハングル攻防戦になってからは役割が完全にただの護衛になってしまったのが残念だったのと、シン・セギョンは失声症が改善する前の話せない役柄の方が世宗が一目置く女官としての説得力があった気がします。

他にも特に密本側の人物背景を見たかった登場人物がいたりしましたが、かなり多くの登場人物で全24話ですから難しかったのでしょう。
 
ハングルの成り立ちや新しい文字を創成する大変さ、今では考えられない文字が一部の権力者の既得損益であった歴史など、文字の本質とそこに関わる人間の本質を描いたかなり見ごたえのある作品だったと思います。もう一回観ればちゃんと消化できるのでしょうけど、視聴にかなりの集中力を要するので多分もうしばらくは観ることはないかな・・・w