韓国ドラマの沼

鑑賞メモその他。新旧ごちゃ混ぜで視聴します。

『オー・マイ・ビーナス』大切なものは目に見えない

   

오 마이 비너스

(邦題:オー・マイ・ビーナス/英題:Oh My Venus)  

f:id:realmind-h:20201112162621j:image

高校時代、"大邱のビーナス”のあだ名をもつカン・ジュウン。素敵な恋人もいる、いわゆるモテモテで周囲から一目置かれていた。しかし15年後、ジュウンは仕事の忙しさとストレスから、いわゆる“ぽっちゃり”した姿で弁護士として働いていた。恋人ウシクとの記念日に、食事に誘われたジュウン。プロポーズを受けると思っていたのだが、まさかの失恋。絶望の中、仕事でアメリカへ渡るも、韓国へ戻る飛行機の中でジュウンは倒れてしまう。そんなジュウンを助けてくれたのは、やたら嫌味なキム・ヨンホという男だった。ひょんなことから彼が、世界的有名なトレーナー、ジョン・キムであることを知り、共にダイエットに励むことになる。(BSイレブン

キャスト・スタッフ
 ●キム・ヨンホ(ジョン・キム):公に顔を出さないハリウッドのトレーナー。
   /ソ・ジソプ(『ごめん、愛してる』『主君の太陽』)
 ●カン・ジュウン:弁護士。高校時代は”大邱のビーナス”と呼ばれていた。
   /シン・ミナ(『僕の彼女は九尾狐』『アラン使道伝』)
 ●イム・ウシク:元水泳の国体選手。15年間カン・ジュウンと付き合っている。
  /チョン・ギョウン(『あなたはひどいです』『美女の誕生』)
 ●オ・スジン:カン・ジュウンの勤める弁護士事務所の副所長。昔太っていた過去を持つ。
  /ユ・イニョン(『仮面』『奇皇后』)
 ●チャン・ジュンソン:ヨンホのサポートで総合格闘技チャンピオンになる。
  /ソンフン(『高潔な君』『じれったいロマンス』)
 ●キム・ジウン:ジュンソンのマネージャー兼トレーナー。
  /HENRY(アーティスト。Super Junior-M元メンバー)
 
 ●演出:キム・ヒョンソク(『黄金の私の人生』『棚ぼたのあなた』)
      イ・ナジョン(『サム、マイウェイ』)
 ●脚本:キム・ウンジ(『私が結婚する理由』)
 
感想
ナムジャ 3人とヨジャ1人で一つ屋根の下同居生活をして、その中のナムジャ一人とヨジャ一人が恋仲になる。
韓国ドラマでよく見かけるこの設定、好きです。似たような設定の『トッケビ』(16年)『青い海の伝説』(16年)とかもいいですね。他の魅力的なナムジャ2人とは恋仲にはならない絶対的な安心感の元、3人とはそれぞれの距離感でわちゃわちゃする。一番ありえない設定で。一番おいしい設定。
(逆にナムジャ2人とヨジャ1人の三角関係はハラハラドキドキし過ぎるので苦手。おもしろいはおもしろいのでなんだかんだ楽しむけど。)
 
『オーマイビーナス』でも、なんやかんやあってソ・ジソプ、ソンフン、ヘンリーが同居する豪邸にシン・ミナが転がり込むので最高です。

ソンフンは今まで高慢なお坊ちゃま役しか見たことがなかったのですが、今回は寡黙で不器用な硬派な役。CMクイーンのチョン・ヘソンに迫られてタジタジになっているところなんて、かわいくて新鮮味がありました。個人的には今回のような硬派な役のソンフンの方が好き。

ヘンリーって骨の髄までエンターテイナーなのね。できないことはないんじゃないってくらい、芸達者な人。ハーバード大卒の弟分役。元々どこか品を感じる人なのでぴったりだったと思います。

 f:id:realmind-h:20201114154836p:plain=

いつでも一緒な3人組。

 

ナムジャ3人は基本的にシン・ミナに対して紳士的なのもよいです。アメリカ帰りだから?ダイエットトレーニングもデブだから痩せろとかシン・ミナを否定することは一切言いません。ソ・ジソプは医師資格を持ったトレーナーなので、あくまで健康を害して体によくないからというスタンスでシン・ミナのダイエットをサポートする点に好感を持ちました。これは現代の異常なまでのルッキズム思考や過剰なダイエット競争に警鐘を鳴らす意味もあったのだと思います。

f:id:realmind-h:20201114150504j:plain

3時間がかりの特殊メイクを施したぽっちゃりシン・ミナ。特殊メイクが自然で違和感がない。

 

 

大切なものは目に見えない

このドラマが伝えたいことは、シンプルに大切なものは目に見えないということなんだと思います。表向きはダイエット(見た目を整えること)をテーマにしながらも、逆説的に目に見えないものの大切さを訴えているわけです。表面的な事柄や見た目に囚われてはいけないと。

その象徴的な出来事とあげられるのが、後半明らかになるソ・ジソプの辛い過去。前半では鍛え上げられた肉体を持つ成功者のように見えますが、実は幼い頃に患った大病と父親とのぎくしゃくした関係から、心に深い傷を負っている。

これが物語の後半ではキーとなり、前半の明るいラブコメから一気に転調、なかなかシリアスな雰囲気になります。

ちょっと突然の転調ぶりに若干の不自然さを感じたりもしますが、ソ・ジソプは闇を抱えていたりアウトローな役の方が本領発揮という感じがします。むしろラブコメの正統派御曹司のように扱われていた前半部分は、なんか嘘っぽくてつまんねえのw

f:id:realmind-h:20201114230423j:plain

365日24時間困り顔のソ・ジゾプくん。またの名をセクシーてんこ盛りくん。

 

過去に辛い経験がある人は、その記憶を打ち消すために自責傾向になることがあるんですよね。自分がもっと過去に上手くやっていたら・・・という罪悪感から、自分をより厳しく追い立ててしまう。

キム・ヨンホもきっとそんな感じで自分に甘くすることが苦手で。ちょっと異常なまでの肉体管理もそこに起因しているのかもしれないと胸を掠めました。

 

そんなキム・ヨンホをサポートして、時には自分を甘やかし、自分で自分を励ますことの大切さを教えてくれるのが、カン・ジュウンなんですよね。

カン・ジュウンは生まれつきのビーナスなんだなあと思いました。見た目が太ってても痩せてても、存在そのものがビーナスなの。要するに自己肯定感が高い人間なので、いつでもどんな姿でも自分のことを信じているし、相手のことの信じている。辛いことがあって落ち込んでも、自分で自分を励ますことができる人間。

そんな人間が傍にいてくれたら、その人のために頑張ろうって思っちゃう。

存在するだけで周りを励ましたり、元気にしてしまう存在のことをひとは皆ビーナスと呼びますよね。

前半ではキム・ヨンホがカン・ジュウンのヘルスサポートを、後半ではカン・ジュウンがキム・ヨンホをメンタルサポートすることで、互いに支え合い絆を深める姿は素敵でした。 

f:id:realmind-h:20201114233211j:plain

この薄ピンクの韓服がめちゃ似合ってて素敵だった。


なんでヒロインは結局完璧が過ぎるので、ちょっと共感を呼びにくいかもなとも思ってしまいます。ヒロインとしては物足りない。

多くの視聴者が感情移入するとしたら、多分カン・ジュウンの友人でもあったオ・スジンではないかなと思います。

f:id:realmind-h:20201114235137j:plain

始めの方は友人であったカン・ジュウンから彼氏を奪ったただの嫌な女扱いで、カン・ジュウンの元カレとのラブラブシーンは無駄シーンとさえ思っていましたが(あまりにも見る価値なさすぎてスキップしたw)、彼女の過去が明らかになるにつれて、彼女もまた心に傷を抱えた人だとわかると、彼女こそこのドラマのテーマで最も語られるべき人物であると感じました。

彼女はカン・ジュウンとは真逆なんですよね。昔太ってて、壮絶な努力で美貌は手に入れたけど、結局自信がないままで、カン・ジュウンに嫉妬している。

上手くいくはずのイム・ウシクとの関係も、わざと自傷的な言動に走って関係を拗らせてしまったり。

きっと世の中の視聴者としては、カン・ジュウンのような自己肯定感バリバリのビーナスより、オ・スジンのような見た目を気にするちょっと拗らせた人間の方が私は近いわ、という人の方が多いと思うのですよ。

でも残念なことに、彼女の拗れた恋の行方は引っ張りに引っ張って、最後はいとも簡単に扱われてしまうのですね。もうちょっと丁寧に描いて欲しかったと個人的には思いました。セカンドラブラインが盛り上がるドラマは、人気ドラマの象徴でもありますしね。

 

見始めたらあっという間、4日間で完走です。

後半は若干シリアス展開ではありましたが、全体的には気負いせずサクサク見れる軽さです。最近重めのドラマばかり見ていたので、やっぱりドラマは個人的にはこれくらいの軽さの方が好きだと改めて思いました。おすすめです。