『相続者たち』孤軍奮闘のヒロイン
『왕관을 쓰려는 자, 그 무게를 견뎌라 – 상속자들』
(邦題:王冠を被ろうとする者、その重さに耐えろ-相続者たち/英題:The Heirs)
海辺でサーフィンを楽しむ男、キム・タン(イ・ミンホ)。帝国グループの御曹司で何不自由ない生活を送っているように見えるが、愛人の子と疎まれ、逃げるようにアメリカへ留学、空虚な日々を送っていた。一方、口のきけない母を持ち、幼い頃から苦労して生きてきたウンサン(パク・シネ)は姉を頼りアメリカへやってきたが、姉の現実を知って失望し居場所をなくしてしまう。途方にくれるウンサンと出会ったタンは、自分の家に招くことに。2人の距離は近づいていくがタンにはラヘルという婚約者がいることを知り、ウンサンは「短い夢を見た」と韓国へ帰っていく。またラヘルも母の再婚相手の息子が同じ学校に通う乱暴者のヨンドと知り、不快感を隠せない。裕福な家庭に育ちながらそれぞれに悩みや傷を抱えた若者たち。そんな中、家族との葛藤に立ち向かうべく、3年振りの帰国を決意をするタン。 彼が戻る学校は名門私立高校の「帝国高校」。この学校には4つの階級が存在する。いずれは会社を相続する真の財閥2世、3世集団の「経営相続者集団」、経営権争いでは外されたが生まれたその瞬間から多くの株を所有している「株相続者集団」、お金より名誉を大事にする法曹界、医学界、学者、政治家の2世、3世集団の「名誉相続者集団」、そして世間の評価を気にして仕方なく入学させられ、経済的な面以外の様々な理由でもこの学校には相応しくない「社会配慮者集団」。そしてタンとウンサンは運命の再会を果たし、それぞれの人生が動き始める...!! (abema tv)
いきなり余談ですが、観始めるまでこのドラマのタイトルを『相続者たち』だと思っていました。正式なタイトルは『王冠を被ろうとする者、その重さに耐えろ-相続者たち(왕관을 쓰려는 자, 그 무게를 견뎌라 – 상속자들)』だそうです。なげぇ。しかもサブタイトルが前にくるタイプ。
韓流スター勢揃い
まずヒロイン(パク・シネ)の母親役が、キム・ミギョンなので、もう面白いのは決定です。
私は”キム・ミギョンがオンマ役のドラマは面白い”教に入信していますので、それだけでもうこのドラマは7割は面白いに決まっています。作品の面白さの決定打は、もはやオンマ役がキム・ミギョンかどうかにかかっていると言ってもいい。(重圧)
国民のオンマ、キム・ミギョン。安心感の代名詞。
初っ端キム・ミギョンの話から入りましたが、もちろんメインキャストも豪華絢爛たるメンバーでして。
主人公イ・ミンホの二番手にキム・ウビンで、ヒロイン役のパク・シネのライバル役にキム・ジウォン。あとその他仲間たち(雑)にカン・ミンヒョク、クリスタル、カン・ハヌル、パク・ヒョンシクって・・・
韓国ドラマをよくご覧になる方はわかると思いますが、このメンツは今じゃ全員が主演を飾る俳優たちで、今また同じキャストで作品撮ろうとしても多分無理なんですよ。
個人的に特にアツいポイントが、イ・ミンホの二番手役にキム・ウビンってところで、キム・ウビンを二番手にするなんて贅沢の極みだし、イ・ミンホかキム・ウビンどっちか選べなんてそんな逆に恐れ多くて選べないし、実際視聴中かなりどっちを選べばいいか苦悩しました・・・
制作発表の写真の画が強い。(左からパク・ヒョンシク、カン・ハヌル、キム・ウビン、カン・ミニョク、イ・ミンホ)
まあ私が苦悩しようがしまいが、実際に選ぶのはヒロインのパク・シネなんですけどね。勘違い甚だしくてすみません。
あ、もちろん主役のイ・ミンホも良いです。キム・ウンスク作家のストレートな歯が浮くようなセリフでも違和感なくサラっと言えてしまう人は、彼以外にはいないですから。
孤軍奮闘のヒロイン
脚本は『シークレットガーデン』(10年)『太陽の末裔』(16年)『トッケビ』(17年)のキム・ウンスク作家ですので、これまた面白くないわけがありません。
基本は帝国高校という高校を舞台にした学園モノですが、その親同士の確執や親子間の確執もあり、狭い世界の中で複雑に絡み合う人間関係が見ものです。
登場人物たちの意外な利害関係やそこに繋がる過去をストーリーの中で自然に紐解いていく展開は、さすがという感じですし、観る側も前のめりにストーリーを追ってしまいます。
子を使って家筋を守り更なる繁栄を目論む親と、そんな親に反抗しながらも親の所有物を使ってマウントを取り合う子。利己的で滑稽な親子間の確執抗争は、まるで現代における朝鮮史劇とでもいいましょうか、富裕層の抗争を描いたドラマは韓国ドラマの定番ではありますが、そこはキム・ウンスク作家ならではの世界観が光っていたと思います。
キム・ウンスク作家の作品が光る点は、徹底した設定にもあると思っていて。今回も特にヒロインのパク・シネが置かれた環境の徹底した過酷さは、なかなかでした。
まず貧しい母子家庭は基本スペックで、冒頭異国の地で唯一の姉妹が行方不明になってしまいます。ここでまず+2pt
異国の地で出会ったタンに恋心を抱き帰国すると、なんやかんやあってそのタンの家に家政婦の娘として住み込む。+1pt
タンの父親の策略で、まったく身の丈に合わないセレブリティ高校に転入させられる。+1pt
唯一頼れそうな幼馴染には、嫉妬深い彼女が常にマークしていて、簡単には頼れない。+1pt
唯一の家族であるオンマは、言語障がい者である。+1pt
ここで、韓国ドラマの定番の仲のいい女友達役が一人くらいいてもいいものの、今回はそれはなし。+1pt
ね、過酷過ぎ。キム・ウンスク作家、ヒロインいじめすぎ。
この設定のおかげで、ヒロインは常にどこでも肩身の狭い思いをしていて、まさに孤軍奮闘、孤立無援、四面楚歌状態。さらに健気な性格なので、見ている側はつらい。
けど、こんな状態だからこそ視聴者はつい感情移入してヒロインを応援したくなるし、ヒーローのヒロインに対する言動がより輝いてみえるのですよ。
かけられた塩によって、より甘さが引き立つ。キム・ウンスク作家が人気の理由は、そんな視聴者の心理をよく理解しているところにあるのかもしれません。
個人的には帝国高校の制服より、転校前の高校の制服の方がかわいいと思う。
終盤、めちゃくちゃ二人の交際に反対していた父親が、 何だかんだでそんな理由で?というような展開で、あっけなく二人の交際を認めてしまい、ラブロマンスとしては失速感があったのは残念でしたが、
同級生たちが相続者たちであるが故に、それぞれ苦悩しながらも大人の仲間入りをしようとする様子は、coming of age作品としてはよくまとまっていたように思います。
当時SBS最高視聴率をたたき出したドラマ というのも納得の面白さだと思います。